2014-08-17






「雨がはげしくなり、アンナの体もかなりぬれはじめていたけれど、かまわなかった。心の中はぽかぽかしている。くるりとうしろを向くと、堤防のもと来た道をかけだした。
「中」にいるとか「外」にいるって、不思議だなと思った。そばにだれかがいても、ひとりっ子でも、大家族でも、関係ない。プリシラも、それからアンドルーでさえも、ときには「外」にいると感じていることを、今なら知っている。それは、自分の「中」の気持ちと関係してるんだ。
二分もすれば湿地屋敷に着くだろう。そうしたら、まきのいいにおいをかいで、パチパチ火のはぜる音を聞きながらほかのみんなといっしょに暖炉のまわりで足をあたためたり、お茶とこんがり焼いた丸パンを食べたりするはずだ。けれど、そんなときよりも、「外」で雨風にさらされてたったひとりで堤防を走っている今のほうが、むしろ自分が「中」にいると感じることができる」

(思い出のマーニー/訳・越前敏弥、ないとうふみこ)